しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館

冒頭文

一 「お侍様というものは……」女役者の阪東小篠(こしの)は、微妙に笑って云ったものである。「お強くなければなりません」 「俺は随分強いつもりだ」こう答えたのは一式小一郎で、年は二十三で、鐘巻流(かねまきりゅう)の名手であり、父は田安家(たやすけ)の家臣として、重望のある清左衛門であった。しかし小一郎は仕官していない。束縛されるのが厭だからで、放浪性の持ち主なのである。秀でた眉、ムッと高い鼻、眼

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 神秘昆虫館
  • 国枝史郎伝奇文庫、講談社
  • 1976(昭和51)年3月12日