しょうねんとうみ
少年と海

冒頭文

一 「お父(とと)、また白山(はくさん)が見える!」 外から帰って来た為吉(ためきち)は、縁側に網をすいている父親の姿を見るや否や、まだ立ち止らない中にこう言いました。この為吉の言葉に何の意味があるとも思わない父親は、 「そうかい。」と一寸(ちょっと)為吉の方を見ただけで、 「どこに遊んでおった?」と手を休めもせずに言いました。 「浜に、沖見ていたの。」と為吉は縁側に腰掛け、「白

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1920(大正9)年8月号

底本

  • 赤い鳥傑作集
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年6月25日、1974(昭和49)年9月10日29版改版