にわ

冒頭文

東京の家は爆弾でこわされ、甲府(こうふ)市の妻の実家に移転したが、この家が、こんどは焼夷弾(しょういだん)でまるやけになったので、私と妻と五歳の女児と二歳の男児と四人が、津軽(つがる)の私の生れた家に行かざるを得なくなった。津軽の生家では父も母も既になくなり、私より十以上も年上の長兄が家を守っている。そんなに、二度も罹災(りさい)する前に、もっと早く故郷へ行っておればよかったのにと仰言(おっしゃ)

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1946(昭和21)年1月

底本

  • 太宰治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年4月25日