あたらしいぶんがくのたんじょう わかいひとにおくる
新しい文学の誕生 若い人に贈る

冒頭文

文学に心をひかれる人は、いつも、自分がかきはじめるより先にかならず読みはじめている。しかも、わたしたちがはじめて読んだ小説や、詩はどんな工合にして手にふれたかと云えば、それは十中八九偶然である。そういう人は大抵よむのがすきで、年の小さいときからいつとはなしに、あれやこれやの文学をよんで来ているのだが、はじめて読んだ小説をいまわたしたちがわきまえているような意味では、小説だとさえ知らずに読みはじめた

文字遣い

新字新仮名

初出

「勤労者文学」創刊号、1948(昭和23)年3月

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日