よものながめ
よもの眺め

冒頭文

この数年の間、私たちは全く外国文学から遮断されて暮して来た。 第一次欧州大戦の後、ヨーロッパの文学が、どんなに変化したかということについては、或る程度知ることが出来ていた。けれども、それにしても十分ということは出来ず例えば「チボー家の人々」は、主人公である青年が、大戦を経た若い時代の精神生活の推移として、世界観を変革されてゆく部分になると、翻訳は頓挫してしまった。世界の歴史の進展によって

文字遣い

新字新仮名

初出

「近代文学」第一巻第一号、1946(昭和21)年1月

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日