せんわ
戦話

冒頭文

十年振りの会飲に、友人と僕とは気持ちよく酔った。戦争の時も出征して負傷したとは聴いていたが、会う機会を得なかったので、ようよう僕の方から、今度旅行の途次に、訪ねて行ったのだ。話がはずんで出征当時のことになった。 「今の僕なら、君」と少し多言になって来た。友人は、酒のなみなみつげてる猪口を右の手に持ったがまた、そのままおろしてしまった。「今の僕なら、どうせ、役場の書記ぐらいで満足しとるのやもの

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本プロレタリア文学大系(序)
  • 三一書房
  • 1955(昭和30)年3月31日