ろうどうしゃのいないふね
労働者の居ない船

冒頭文

こう云う船だった。 北海道から、横浜へ向って航行する時は、金華山の燈台は、どうしたって右舷に見なければならない。 第三金時丸——強そうな名前だ——は、三十分前に、金華山の燈台を右に見て通った。 海は中どころだった。凪いでると云うんでもないし、暴化(しけ)てる訳でもなかった。 三十分後に第三金時丸の舵手(コーターマスター)は、左に燈台を見た。 コムパ

文字遣い

新字新仮名

初出

「解放」1926(大正15)年5月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集
  • 新日本出版社
  • 1984(昭和59)年8月25日