じゅうしまつ
十姉妹

冒頭文

田面には地図の様な線条が縦横に走って、旱(ひでり)の空は雨乞の松火(たいまつ)に却って灼かれたかの様に、あくまでも輝やき渡った。情けないほどのせせらぎにさえ仕掛けた水車を踏む百姓の足取りは、疲れた車夫の様に力が無く、裸の脊を流れる汗は夥しく増えた埃りに塗(まみ)れて灰汁(あく)の様だった。 そして、小作争議事務所に当てたS寺の一室は日増しに緊張して行った。 「おい、遂々(とうとう)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本プロレタリア文学集・11 文芸戦線作家集(二)
  • 新日本出版
  • 1985(昭和60)年12月25日