そうせきとじぶん
漱石と自分

冒頭文

夏目君のことを又話せといふが、どんなことにしろ物事の眞相が誤まらずに傳へられることは稀であり、その上近來甚だ記憶が不確であるからあんまり話をしたくない。 夏目君に最初に會つたのは死んだ山川信次郎氏の紹介であつたと思ふ。尤もこれよりも前に自分が全然關係が無かつたといふわけでもない。日本で最初に中學校令の發布によつて出來た東京府第一中學に、明治十二年に自分は入學したのであるが、その折夏目君も

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 狩野亨吉遺文集
  • 岩波書店
  • 1958(昭和33)年11月1日