じんせいのふぜい
人生の風情

冒頭文

明治二十年代の日本のロマンティシズムの流れの中からは、藤村、露伴をはじめいろいろの作家が生れたわけだけれども、樋口一葉は、その二十五年の生涯が短かっただけに、丁度この時代のロマンティシズムが凝って珠玉となったような「たけくらべ」を代表作として、その完成において作家としての一生をも閉じた。 一葉が文学を愛する人々の心に一つの絶えない魅力を与えているのは、彼女の生涯と芸術とが、近代文学におけ

文字遣い

新字新仮名

初出

「一葉全集」月報「一葉ふね」第一号、1941(昭和16)年7月発行

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日