こんにちのさっかとどくしゃ
今日の作家と読者

冒頭文

この一二年来、文学的な本を読む読者の数がぐっとふえていることは周知の事実であって、それらの新しい読者層の何割かが、通俗読物と文学作品との本質の区別を知らないままに自身の購買力に従っているという現象も、一般に注意をひいて来ている。そこに、今日の文化の地味の問題だの文学の成長の可能性の問題が、複雑な現今の社会生活の一面として横たわっていることに就て、総ての作家が無関心に暮しているわけでもないと思う。

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1941(昭和16)年2月24日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日