へいたんならぬみち こくみんぶんがくにふれて
平坦ならぬ道 国民文学にふれて

冒頭文

この頃は「国民文学」という声がいろいろな場面に響いていて、日本文学の明日の姿として或る意味では文書的な性質をもつ方向づけのような印象を与えている。けれども、どういうのが国民文学であるかという点になって来ると、各人各説であって、ともかくそれは現実を超えた文学でなくてはなるまい、という説(青野氏)或は偽せものから本ものを見わける文学という論があり、或は万民の心をつかむ文学を、という要望も国民文学の声に

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸情報」1940(昭和15)年12月下旬号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日