『しずかなるあい』と『しょこくのてんにょ』 たけうちてるよしとながせきよこしのししゅう
『静かなる愛』と『諸国の天女』 竹内てるよ氏と永瀬清子氏の詩集

冒頭文

貧困というものは、云ってみれば今日世界にみちている。病気というものも、その貧困ときりはなせない悲しいつながりをもって今日の世界にみちている。今日の社会感情のなかでは、貧しさと病とに対して闘っている人々の余りの多さのために、おどろきが失われて普通のことがらの一つでもあるかのようになってさえいる。沁々考えてみると、そういう共通な不幸に感じを鈍くさせられて生きている生活の条件の荒っぽさ、冷血さはおそろし

文字遣い

新字新仮名

初出

「新女苑」1940(昭和15)年10月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日