しょうわのじゅうよねんかん
昭和の十四年間

冒頭文

一 大正年代は、日本の文学界にもヨーロッパ大戦後の世界を洗いはじめたさまざまの文学的動きを、日本独特の土壤の上に成育させながら、極めて複雑な形で昭和に歩み進んだ。 ヨーロッパ大戦後の、万人の福利を希うデモクラシーの思想につれて、民衆の芸術を求める機運が起って『種蒔く人』が日本文学の歴史の上に一つの黎明を告げながら発刊されたのは大正十一年であった。ロマンティックな傾向に立って文学的歩

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日