きょこうのはる
虚構の春

冒頭文

師走上旬 月日。 「拝復。お言いつけの原稿用紙五百枚、御入手の趣(おもむき)、小生も安心いたしました。毎度の御引立、あり難く御礼申しあげます。しかも、このたびの御手簡には、小生ごときにまで誠実懇切の御忠告、あまり文壇通をふりまわさぬよう、との御言葉。何だか、どしんとたたきのめされた気持で、その日は自転車をのり廻しながら一日中考えさせられました。というのは、実を言えば貴下と吉田さんにはそ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界」1936(昭和11)年7月

底本

  • 太宰治全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年8月30日