しぜんびょうしゃにおけるしゃかいせいについて
自然描写における社会性について

冒頭文

「見る人のこころごころの秋の月」という文句がある。天にはただ一つしかない秋の月ではあるが、その月を眺めるひとの心のありようによって、清明な快い月であると思われるであろうし、月のさやけさに又かえって恨が深まるようなこともあろう。自然と人間との感情の交錯を、人間の主観の立場に立って観察したわかり易い一例であると思う。 古人がすでにその風流の途上で看破している自然と人間の主観との以上のような交流は

文字遣い

新字新仮名

初出

不詳

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日