といにこたえて
問に答えて

冒頭文

この三四年の間、小説を書かないのは何故であるか。そういう問いが記者によって出された。 私の今の状態から云えば、この問いの中で書かないと云われているところは既に書かなかったという、文法の上では過去の形でされる方がふさわしいし、又全く小説を書かなかったというわけでもないが、質問そのものは面白く思った。 或る作家が、書く、書かないという現象をそれぞれについて見ると、一口で片づけきらぬ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸通信」1934(昭和9)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日