こじきがくせい
乞食学生

冒頭文

大貧に、大正義、望むべからず      ——フランソワ・ヴィヨン       第一回 一つの作品を、ひどく恥ずかしく思いながらも、この世の中に生きてゆく義務として、雑誌社に送ってしまった後の、作家の苦悶に就(つ)いては、聡明な諸君にも、あまり、おわかりになっていない筈(はず)である。その原稿在中の重い封筒を、うむと決意して、投函する。ポストの底に、ことり、と幽(かす)かな音がする。そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「若草」1940(昭和15)年7~12月

底本

  • 太宰治全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年10月25日