なまづめをはぐ
生爪を剥ぐ

冒頭文

夏の夜の、払暁に間もない三時頃であった。星は空一杯で輝いていた。 寝苦しい、麹室のようなムンムンする、プロレタリアの群居街でも、すっかりシーンと眠っていた。 その時刻には、誰だって眠っていなければならない筈であった。若し、そんな時分に眠っていない者があるなら、それは決して健康な者ではない。又、健康なものでも、健康を失うに違いない。 だが、その(時刻)は眠る時刻であった

文字遣い

新字新仮名

初出

「不同調」1927(昭和2)年1月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集
  • 新日本出版社
  • 1984(昭和59)年8月25日