ちちいろのもや
乳色の靄

冒頭文

四十年来の暑さだ、と、中央気象台では発表した。四十年に一度の暑さの中を政界の巨星連が右往左往した。 スペインや、イタリーでは、ナポレオンの方を向いて、政界が退進した。 赤石山の、てっぺんへ、寝台へ寝たまま持ち上げられた、胃袋の形をしたフェットがあった。 時代は賑かであった。新聞は眩(めまぐる)しいほど、それ等の事を並べたてた。 それは、富士山の頂上を、ケシ飛

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1926(大正15)年12月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集
  • 新日本出版社
  • 1984(昭和59)年8月25日