こんにちのじょりゅうさっかとじだいとのこうしょうをろんず
今日の女流作家と時代との交渉を論ず

冒頭文

一 女性からどうしてよい芸術が生れ難いか、またこれまで多く女性によって発表された作品に、どうして時代との交渉が少なかったかというような問題に対して、私は先ず第一に文芸の本質たる個人の成長ということを考てみたいと思います。私は物を見る時に、必ず個人という観念を基礎にして物を見ます。その物を見究めることに於いて、個人としての女、個人としての男に就いていうならば、その生活上に於ける色々の意味から、

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞」1922(大正11)年5月31日~6月2日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日