さっかときょうようのしょそう
作家と教養の諸相

冒頭文

作家にとって教養というものは、どんな関係にあるのだろうか。これまでのいろいろの時代に、作家と教養のことが云われたのであったが、それぞれにその時代の文学的趨勢とでも云うべきものを、何かの形で反映していることは、今日私たちを考えさせるところだと思う。 徳川時代というものの中で眺める馬琴というような作家は、同時代の庶民的情調に立つ軟文学の気風に対して、教養派のくみであったろうが、馬琴の芸術家と

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸情報」第六巻、1940(昭和15)年5月下旬号

底本

  • 宮本百合子全集 第十一巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年1月20日