かっさい |
| 喝采 |
冒頭文
手招きを受けたる童子 いそいそと壇にのぼりつ「書きたくないことだけを、しのんで書き、困難と思われたる形式だけを、えらんで創り、デパートの紙包さげてぞろぞろ路ゆく小市民のモラルの一切を否定し、十九歳の春、わが名は海賊の王、チャイルド・ハロルド、清らなる一行の詩の作者、たそがれ、うなだれつつ街をよぎれば、家々の門口より、ほの白き乙女の影、走り寄りて桃金嬢(てんにんか)の冠を捧(ささ)ぐとか
文字遣い
新字新仮名
初出
「若草」1936(昭和11)年10月
底本
- 太宰治全集2
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1988(昭和63)年9月27日