かもめ

冒頭文

鴎(かもめ)というのは、あいつは、唖(おし)の鳥なんだってね、と言うと、たいていの人は、おや、そうですか、そうかも知れませんね、と平気で首肯するので、かえってこっちが狼狽(ろうばい)して、いやまあ、なんだか、そんな気がするじゃないか、と自身の出鱈目(でたらめ)を白状しなければならなくなる。唖は、悲しいものである。私は、ときどき自身に、唖の鴎を感じることがある。 いいとしをして、それでも淋

文字遣い

新字新仮名

初出

「知性」1940(昭和15)年1月

底本

  • 太宰治全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年10月25日