とうそんのぶんがくにうつるしぜん |
藤村の文学にうつる自然 |
冒頭文
現代の日本の作家の中で、その作品に最も多く自然をうけ入れ、示しているのは誰であろう。島崎藤村をその一人としてあげ得ると思う。 藤村は、明治五年、長野県の馬籠(まごめ)で生れた。家は馬籠の旧本陣で、そこの大規模な家の構え、召使いなどの有様は、「生い立ちの記」の中にこまかく描かれている。父というひとは、「それは厳格で」「家族のものに対しては絶対の主権者で、私達に対しては又、熱心な教育者で」あ
文字遣い
新字新仮名
初出
不詳
底本
- 宮本百合子全集 第十一巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年1月20日