くろいちたい
黒い地帯

冒頭文

一 煉瓦工場からは再び黒煙が流れ出した。煤煙は昼も夜も絶え間なく部落の空を掩(おおい)包んだ。そして部落中は松埃(まつぼこり)で真黒に塗潰された。わけても柳、鼠梨、欅などの樹膚は、何れとも見分けがたくなって行った。桐、南瓜、桑などの葉は、黒い天鵞絨(びろうど)のように、粒々のものを一面に畳んだ。 雨が降ると黒い水が流れた。何処の樹木にも黒い雀ばかりだった。太陽は毎日毎日熱っぽく煤ば

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二)
  • 新日本出版社
  • 1985(昭和60)年3月25日