いも

冒頭文

福治爺は、山芋を掘ることより外に、何も能が無かった。彼は毎日、汚れた浅黄の手拭で頬冠りをして、使い古した、柄に草木の緑色が乾着いている、刃先の白い坏(つくし)を担いで、鉈豆煙管(なたまめきせる)で刻(きざみ)煙草を燻しながら、芋蔓の絡んでいそうな、籔から籔と覗き歩いた。 叢の中を歩く時などは、彼は、右手に握った坏で、雑草を掻分けながら、左の手からは、あまり好きでも無い刻煙草を吸う鉈豆煙管

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二)
  • 新日本出版社
  • 1985(昭和60)年3月25日