きぞくひがん うていてんくシリーズ・さん
奇賊悲願 烏啼天駆シリーズ・3

冒頭文

義弟の出獄 烏啼天駆(うていてんく)といえば、近頃有名になった奇賊であるが、いつも彼を刑務所へ送り込もうと全身汗をかいて奔走(ほんそう)している名探偵の袋猫々(ふくろびょうびょう)との何時果てるともなき一騎討ちは、今もなお酣(たけなわ)であった。 その満々たる自信家の烏啼天駆が、こんどばかりは困り果ててしまった。散歩者の胸の中から心臓を掏(す)り盗(と)る技術も持っているし、一夜の

文字遣い

新字新仮名

初出

「実話と読物」1947(昭和22)年5月号

底本

  • 海野十三全集 第12巻 超人間X号
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年8月15日