がもううじさと
蒲生氏郷

冒頭文

大きい者や強い者ばかりが必ずしも人の注意に値する訳では無い。小さい弱い平々凡々の者も中々の仕事をする。蚊の嘴(くちばし)といえば云うにも足らぬものだが、淀川両岸に多いアノフェレスという蚊の嘴は、其昔其川の傍の山崎村に棲(す)んで居た一夜庵(いちやあん)の宗鑑の膚(はだえ)を螫(さ)して、そして宗鑑に瘧(おこり)をわずらわせ、それより近衛(このえ)公をして、宗鑑が姿を見れば餓鬼つばた、の佳謔(かぎゃ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第4巻
  • 小学館
  • 1989(平成元)年4月1日