ふがくひゃっけい
富嶽百景

冒頭文

富士の頂角、広重(ひろしげ)の富士は八十五度、文晁(ぶんてう)の富士も八十四度くらゐ、けれども、陸軍の実測図によつて東西及南北に断面図を作つてみると、東西縦断は頂角、百二十四度となり、南北は百十七度である。広重、文晁に限らず、たいていの絵の富士は、鋭角である。いただきが、細く、高く、華奢(きやしや)である。北斎にいたつては、その頂角、ほとんど三十度くらゐ、エッフェル鉄塔のやうな富士をさへ描いてゐる

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文体」1939(昭和14)年2、3月

底本

  • 筑摩現代文学大系 59 太宰治集
  • 筑摩書房
  • 1975(昭和50)年9月20日