くろねこ
黒猫

冒頭文

病気が少しよくなり、寝ながら本を読むことができるようになった時、最初に手にしたものは旅行記であった。以前から旅行記は好きだったが、好きなわりにはどれほども読んでいなかった。人と話し合って見ても旅行記は案外読まれていず、少くともある種の随筆などとはくらべものにはならぬようであった。自分にとって生涯関係のありそうにもない土地の紀行など興味もなし、読んで見たところで全然知らぬ土地が生き生きと感ぜられるよ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第32巻
  • 小学館
  • 1989(平成元)年8月1日