せつま
雪魔

冒頭文

東京の学校が休みになったので、彦太少年は三月ぶりに木谷村へ帰って来た。村はすっかり雪の中にうずまっていた。この冬は雪がたいへん多くて、もう四回も雪下(お)ろしをしたそうである。駅をおりると、靴をかんじきにはきかえて村まで歩いたが、電柱が雪の中からほんのわずかに黒い頭を出しているばかりで、屋根の見える家は一軒もなかった。 「この冬は、これからまだ三度や四度は、雪下ろしをせねばなるまいよ」

文字遣い

新字新仮名

初出

「東北少国民」河北新報社、1946(昭和21)年3月~9月号

底本

  • 海野十三全集 第12巻 超人間X号
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年8月15日