よとまんねんひつ
余と万年筆

冒頭文

此間魯庵(ろあん)君に会った時、丸善の店で一日に万年筆が何本位売れるだろうと尋ねたら、魯庵君は多い時は百本位出るそうだと答えた。夫(それ)では一本の万年筆がどの位長く使えるだろうと聞いたら、此間横浜のもので、ペンはまだ可なりだが、軸(じく)が減ったから軸丈(だけ)易(か)えて呉(く)れと云って持って来たのがあるが、此人は十三年前に一本買ったぎりで、其一本を今日まで絶えず使用していたのだというから、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚版 夏目漱石全集 10
  • 筑摩書房
  • 1972(昭和47)年1月10日