やまとゆきのにっき
山と雪の日記

冒頭文

夏の日記      大正池 峰々の谷に抱かれた雪の滴を集めて流れて、梓川は細長い上高地の平原を、焼岳の麓まできた時に、神の香炉から流れ出たラヴァはたちまちにその流れを阻んだ。岩に激してきた水は、焼岳の麓の熊笹をひたし、白樺の林をひたして対岸の霞沢岳の麓に及んだ。いままでゴーゴーと流れる谷川の水はここにきて、たちまち死んだようになみなみとたたえた緑藍色の湖の中に吸いこまれて行く。その中に枯れ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 山と雪の日記
  • 中公文庫、中央公論社
  • 1977(昭和52)年4月10日