かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄

冒頭文

事件引継簿(ひきつぎぼ) 或る冬の朝のことであった。 重い鉄材とセメントのブロックである警視庁の建物は、昨夜来の寒波(かんぱ)のためにすっかり冷え切っていて、早登庁(はやとうちょう)の課員の靴の裏にうってつけてある鋲(びょう)が床にぴったり凍(こお)りついてしまって、無理に放せば氷を踏んだときのようにジワリと音がするのであった。朝日は、今ようやく向いの建物の頭を掠(かす)めて、低い

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 海野十三全集 第13巻 少年探偵長
  • 三一書房
  • 1992(平成4)年2月29日