ぞうしょかのはなし
蔵書家の話

冒頭文

清朝はその初頃から有名な藏書家が多く、錢謙益及その族孫錢曾、又は季振宜などは、順治より康煕の初年に有名であるが、併し藏書家の最盛期は乾隆の中頃以後にあるので、乾隆の末から嘉慶を經て、道光の初頃まで居つた蘇州の黄丕烈は最も有名で、殆ど清朝を通じて第一の藏書家と言つてよいのである。 黄丕烈は宋版の本百餘種を得て、百宋一廛と號した。この頃の藏書家は、單に收藏の多きに誇るのみでなく、又多く古版の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「書物の趣味 第一冊」1926(昭和2)年11月

底本

  • 内藤湖南全集 第十二巻
  • 筑摩書房
  • 1970(昭和45)年6月25日