しょくどう
食堂

冒頭文

木村は役所の食堂に出た。 雨漏りの痕(あと)が怪しげな形を茶褐色に画(えが)いている紙張の天井、濃淡のある鼠色(ねずみいろ)に汚れた白壁、廊下から覗(のぞ)かれる処だけ紙を張った硝子窓(がらすまど)、性(しょう)の知れない不潔物が木理(もくめ)に染み込んで、乾いた時は灰色、濡(ぬ)れた時は薄墨色に見える床板。こう云う体裁の広間である。中にも硝子窓は塵(ちり)がいやが上に積もっていて、硝子

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 森鴎外全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年7月24日