あそび
あそび

冒頭文

木村は官吏である。 ある日いつもの通りに、午前六時に目を醒(さ)ました。夏の初めである。もう外は明るくなっているが、女中が遠慮してこの間(ま)だけは雨戸を開けずに置く。蚊幮(かや)の外に小さく燃えているランプの光で、独寝(ひとりね)の閨(ねや)が寂しく見えている。 器械的に手が枕(まくら)の側(そば)を探る。それは時計を捜すのである。逓信省で車掌に買って渡す時計だとかで、頗(す

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 普請中 青年 森鴎外全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年7月24日