あそび |
| あそび |
冒頭文
木村は官吏である。 ある日いつもの通りに、午前六時に目を醒(さ)ました。夏の初めである。もう外は明るくなっているが、女中が遠慮してこの間(ま)だけは雨戸を開けずに置く。蚊幮(かや)の外に小さく燃えているランプの光で、独寝(ひとりね)の閨(ねや)が寂しく見えている。 器械的に手が枕(まくら)の側(そば)を探る。それは時計を捜すのである。逓信省で車掌に買って渡す時計だとかで、頗(すこぶ)る大き
文字遣い
新字新仮名
初出
「三田文學」1910(明治43)年8月
底本
- 普請中 青年 森鴎外全集2
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1995(平成7)年7月24日