しつらく
失楽

冒頭文

わが上(うへ)に一切の事物を示す「失楽(しつらく)」よ、 過ぎゆく日の最後なる今日(けふ)の「失楽」よ、 わが身の上の「失楽」よ、我(われ)は汝(なんぢ)に叫ぶ、 「全く空(むな)し」と。 我は幽欝(ゆうゝつ)なる汝の栖所(すみか)に圧込(おしこ)められ、 我は其処(そこ)に、粛索(せうさく)と飢渇(きかつ)との苦を続く。 何物も好(よ)からず、何物も最後まで期待せし所に値せず。 か

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 太陽
  • 博文堂
  • 1913(大正2)年6月号