もうどう
妄動

冒頭文

×われは曙にさまよふ影なり、亡びんとする或物なり、亡ぶるを否み難きものなり。われは珊瑚の色したる灰なり、暮れゆく春の竈場(フオオイエ)なり。われは自(みづか)ら憐んで描きぬ、わななきて氷の上に傾く焚火(たきび)を。おお、この崩れ落つる火の傷ましさ、熱もなく、音もなく、寄る人もなく…………唯はかなげに、青みつつ薄赤し。   ×わが行手こそ闇なれ、真冬なれ、あまたの児を伴れし乞丐(かたゐ)の孤独なれ。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 三田文学
  • 三田文学会
  • 1913(大正2)年5月号