明治三十二年 春月 別れてながき君とわれ 今宵あひみし嬉しさを 汲てもつきぬうま酒に 薄くれなゐの染いでし 君が片頬にびんの毛の 春風ゆるくそよぐかな。」 たのしからずやこの夕 はるはゆふべの薄雲に 二人のこひもさとる哉 おぼろに匂ふ月のもと きみ心なきほゝゑみに わかき命やさゝぐべき。」 わがをひ やよをさなこよなれが目の さやけき色をたとふ