ごご
午後

冒頭文

二人は先刻(さつき)クリシイの通で中食して帰つて来てからまだ一言も言葉を交さない。女は暖炉(ストオブ)の上の棚の心覚えのある雑誌の下から郵船会社の発船日表を出した。さうして長椅子にべたりと腰を下して、手先だけを忙しさうに動して日表を拡げた。何時の昔から暗記して知り切つたものを、もとから本気で読まうなどと思つて居るのではない。男の注意をそれへ引いて、それから云ひ掛りをつけて喧嘩が初めたいのであつた。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中央公論
  • 中央公論社
  • 1913(大正2)年3月号