かえってから
帰つてから

冒頭文

浜松とか静岡とか、此方(こちら)へ来ては山北とか、国府津とか、停車する度に呼ばれるのを聞いても、疲労し切つた身体(からだ)を持つた鏡子(かねこ)の鈍い神経には格別の感じも与へなかつたのであつたが、平沼(ひらぬま)と聞いた時にはほのかに心のときめくのを覚えた。それは丁度ポウトサイド、コロンボと過ぎて新嘉坡(しんがぽうる)に船の着く前に、恋しい子供達の音信(たより)が来て居るかも知れぬと云ふ望(のぞみ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新小説
  • 春陽堂
  • 1913(大正2)年2月号