つきふたよ
月二夜

冒頭文

新涼の季節に入つて良い月夜がつづく。月暦の上でこそ閏のために中秋は来月に延びてゐるが、実際の気候から云へば例年のやうに今が中秋の月夜の後である。月は昔から東洋人により多く喜ばれる。欧洲でも詩人は月を歌ふが、一般人は月よりも太陽を際立つて喜ぶ。それは欧洲の風土が支那や日本のやうに豊かに日光に恵まれることが少いからである。この意味で日本人は日光の恩恵に慣れて少し太陽を粗末にしてゐるとも思はれる。我国の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆58 月
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年8月25日