ゆきわたり
雪渡り

冒頭文

雪渡り その一(小狐(こぎつね)の紺三郎) 雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来てゐるらしいのです。 「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」 お日様がまっ白に燃えて百合(ゆり)の匂(にほひ)を撒(ま)きちらし又雪をぎらぎら照らしました。 木なんかみんなザラメを掛けたやうに霜でぴかぴかしてゐます。 「堅雪かんこ、凍(し)み雪しんこ。」

文字遣い

新字旧仮名

初出

「愛国婦人」1921(大正10)年12月号、1922(大正11)年1月号

底本

  • 宮沢賢治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年1月28日