はなまくら
花枕

冒頭文

上 神の工(たくみ)が削りなしけん千仞の絶壁、上(うへ)平(たひら)に草生ひ茂りて、三方は奇しき木の林に包まれ、東に向ひて開く一方、遙の下に群れたる人家、屈曲したる川の流を見るべし。此處に飛び來れるは、さゝやかに美しき神の子二人、何處よりか採りて來し種々の花を植ゑ試みつゝ、白き羽の一人は黄なる羽の一人に向ひ、 「匂よ。菫(すみれ)、苧環(をだまき)、櫻草、丁字草(ちやうじさ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新小説」1897(明治30)年4月

底本

  • 花枕 他二篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1940(昭和15)年2月3日