そとにでたとも
外に出た友

冒頭文

「二三年、娑婆の風にあたつて来るよ。」 退院するY——を見送つて行くと、門口のところで彼はさう言つて私の手を握つた。 「うん、体、大切にしろ、な。」 と言つて、私はYの手を握りかへしてやつた。それ以上は何も言ふことがなかつた。手を放すとYは柊の垣に沿つて駅の方へ歩いて行つた。 Yの姿が見えなくなると、私はその足で眼科へ出かけた。Yとは、私はもう二年近い交遊をもつてゐる。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆28 病
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年2月25日