ごじょうしゅっせ
悟浄出世

冒頭文

寒蝉敗柳(かんせんはいりゅう)に鳴き大火西に向かいて流るる秋のはじめになりければ心細くも三蔵(さんぞう)は二人の弟子にいざなわれ嶮難(けんなん)を凌(しの)ぎ道を急ぎたもうに、たちまち前面に一条の大河あり。大波湧返(わきかえ)りて河の広さそのいくばくという限りを知らず。岸に上りて望み見るときかたわらに一つの石碑あり。上に流沙河(りゅうさが)の三字を篆字(てんじ)にて彫付け、表に四行の小楷字(かいじ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 李陵・山月記・弟子・名人伝
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年9月10日改版初版