こいずみやくもひこうがほん「ようましわ」
小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」

冒頭文

十余年前に小泉八雲(こいずみやくも)の小品集「心」を読んだことがある。その中で今日までいちばん深い印象の残っているのはこの書の付録として巻末に加えられた「三つの民謡」のうちの「小栗判官(おぐりはんがん)のバラード」であった。日本人の中の特殊な一群の民族によっていつからとも知れず謡(うた)い伝えられたこの物語には、それ自身にすでにどことなくエキゾティックな雰囲気がつきまとっているのであるが、それがこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1934(昭和9)年10月

底本

  • 寺田寅彦全集 第十七巻
  • 岩波書店
  • 1962(昭和37)年2月7日