さるかにがっせんとももたろう
さるかに合戦と桃太郎

冒頭文

近ごろある地方の小学校の先生たちが児童赤化の目的で日本固有のおとぎ話にいろいろ珍しいオリジナルな解釈を付加して教授したということが新聞紙上で報ぜられた。詳細な事実は確かでないが、なんでもさるかに合戦(かっせん)の話に出て来るさるが資本家でかにが労働者だということになっており、かにの労働によって栽培した柿(かき)の実をさる公が横領し搾取することになるそうである。なるほどそう言えば、そうも言われるかも

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸春秋」1933(昭和8)年11月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第四巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1948(昭和23)年5月15日、1963(昭和38)年5月16日第20刷改版